AIへの指示は「足す」より「削る」。細かく書くほど良い、は逆だった
先日、Xで「プロンプトは細かく書け、という常識をClaudeが終わらせた」という投稿を見かけました。根拠になっていたのは、Anthropic自身の検証です。Claude Codeに与える指示文(システムプロンプト)を80%以上削っても、コーディングの成績は落ちなかった、というものでした(参考)。
AIには細かく指示するほど良い。多くの人が信じてきたこの常識が、いま逆転しつつあります。今日はその話をします。
細かく指示するほど良い、が、なぜ逆になったのか
これまで、AIをうまく使うコツは、指示を丁寧に、細かく書くことだとされてきました。間違えないようにルールを足し、例を足し、注意書きを足す。親切心からの工夫です。
ところが、AIが賢くなったことで、この足し算が裏目に出るようになりました。細かく縛りすぎると、AIは自分で文脈を読んで判断する力を発揮できません。手取り足取り指示された人が、かえって動きにくくなるのと同じです。Anthropicが指示文を大きく削っても成績が落ちなかったのは、新しいAIは、細かく言われないほうが力を出せるようになったからです。
一番の問題は、指示同士がぶつかること
足し算の一番の弊害は、量そのものより、指示同士の矛盾です。
例えるなら、部下に記録はしっかり残してと言いながら、別の場所でよけいな書き込みはするなと指示しているような状態です。人間なら空気を読んで折り合いをつけますが、AIは律儀なので、作業に入る前に結局どっちを優先すればいいんだと考え込んでしまいます。親切のつもりで足した指示が、AIの足を引っ張っていたわけです。指示を増やすほど、こういう見えない矛盾は静かに増えていきます。
これから要るのは、削る力
元の投稿では、新しい指示のコツがいくつか挙げられていました。経営者向けに言い換えると、こうなります。
- 決めつけるより、任せる。「これは絶対こうしろ」と縛るより、「まわりに合わせて」と任せたほうが、AIは文脈を読んで正解に寄せてくれる
- 例をたくさん並べるより、意図を伝える。場合分けを列挙するより、何のためにやるのかを伝えるほうが応用が効く
- 最初に全部渡すより、必要な時に参照させる。関係しそうな情報を先回りで全部積まない
- 同じことを何度も言うより、一度だけ明確に。くどく繰り返すほど、逆に矛盾やノイズが増える
共通しているのは、うまい指示を大量に書く力ではなく、余計な指示を削る力が大事になった、ということです。
これは、人に仕事を任せるときと同じ
腑に落ちやすいので、人に置き換えます。優秀な人に仕事を頼むとき、一から十まで手順を指定する上司はいません。何のために、どうなればゴールかを伝えて、あとは任せる。細かく縛るのは、相手を信用していないか、こちらが不安なときです。
AIも、同じ段階に来ました。賢くなった相手に、昔と同じ細かさで指示を出し続けると、むしろ邪魔になる。任せる範囲を広げて、口出しを減らす。これができる人ほど、いい結果を引き出せます。
思うような答えが返らない時こそ、疑うべきは
最後に、実務で効く視点を一つ。
AIに頼んで、思ったものが返ってこない。そんなとき、たいていの人は説明が足りなかったかなと、さらに指示を書き足します。でも、これからは逆かもしれません。足りないのではなく、書きすぎている可能性がある。一度、指示をぜんぶ見直して、矛盾している部分・言わなくても伝わる部分を削ってみる。それだけで、返ってくるものが変わることがあります。
まとめ
AIには細かく指示するほど良い、という常識は、逆転しました。指示を足しすぎると、矛盾やノイズが増えて、かえってAIを迷わせます。これから要るのは、うまく書く力より、余計な指示を削る力。目的と必要な情報だけを渡して、細かい判断は任せる。人に仕事を任せるときと、同じ感覚です。
AIがうまく動かないのは、指示が足りないからだ。もしそう思って書き足し続けているなら、一度、削る方向を試すタイミングかもしれません。AI導入・業務自動化支援では、この任せ方の整え方から一緒にやります。まずは60分の無料個別相談へ。